千葉郁太郎著『アニメ聖地移住』

『アニメ聖地移住』(インターナショナル新書、2025年)

アニメの舞台となった場所をめぐる「アニメ聖地巡礼」は結構前から聞いていました。パッと思いつくのが『海がきこえる』(スタジオジブリ、1993年)の舞台となった高知県。キャラクターデザインを担当した近藤勝也さんの絵が好きなんですよね。

 

巡礼からさらに踏み込んで、その場所に移住することについて書かれているのがこの本です。著者の千葉さん自身がアニメ移住実践者で、京都にいるタイミングで、同地を舞台とした『たまごまーけっと』(京都アニメーション、2013年)、『有頂天家族』(ピーエーワークス、2013年)と出会い、そのまま京都に住んでいます。

青森県弘前市を舞台とした『ふらいんぐうぃっち』(J.C.STAFF、2016年)、静岡県沼津市の『ラブライブ!サンシャイン‼』(サンライズ、2016年)、茨城県東茨城郡大洗町の『ガールズ&パンツァー』(アクタス、2012年)などが有名なところですが、ほかにもたくさん取り上げられています。

この本がほかの移住関連のものと違うのは、「競争主義」「能力主義」がもたらす「生きづらさ」に踏み込んでいることです。生きづらさから人生の主導権を取り戻そう、その手段の1つとして、自分の「好き」を基準に生活を設計し、その中で仕事を選択するのがアニメ聖地移住なのです。多くの場合、まずは仕事の選択からスタートするところを、好きなこと・もの→仕事の順にするのです。

ファンは移住までに何度も現地に足を運ぶので、情報や地元の人とのつながりを持てる場合が多く、移住するかどうかの判断に時間をかけることができます。これは聖地移住の大きな強みの1つです。

 

「アニメが終わったらどうなるの?」という疑問については、そのまま住み続ける人が多いそうで、「終わったからさようなら」というケースは少ないそうです。

移住のきっかけは人それぞれですが、「好きなこと」を軸とするアニメ聖地移住は非常に魅力的な選択肢だと思います。