柴田剛著『地獄の田舎暮らし』

美しい自然に囲まれ、広い家で、あくせくすることなくゆったりした時間の流れを堪能したい…

でも、地方「都市」じゃなくて、山間部や別荘エリアなど、本当に「田舎」への移住となると、失敗事例も数々耳にするよなあ…

 

『地獄の田舎暮らし』(ポプラ新書、2021年)

タイトルからも想像できるように、この本はこれらのネガティブ事例から始まります。それだけ地域によって特徴や習慣が千差万別で、(同じ日本なんだけど)外部から内情が分かりにくく、いざ移住してみて「こんなはずじゃなかった」となる話は実に多いものです。それを防ぐために、移住する前にとれる対策の数々を紹介してくれています。

大きく地域・物件選び、生活費、人間関係に分けて書かれていますが、このなかでも「こりゃよほど意識していないと見落とすな」と思ったのが、太陽光パネルの存在です。

「売電施設としての事業認定は、代理申請を請け負う特殊法人を通じて経済産業省に申請し、業者らは経済産業省から直接に認可を受けるかたち」であり、さらに経産省は個人情報保護やコンプライアンスを盾にして認可場所を明かさないため、地元自治体ではなすすべがないそうです。そして太陽光発電を商機とみる地域の人々が少なくなく、移住者の利益と地域住民の利益が必ずしも一致しないという側面もあります。

でも、景観重視で購入した物件の目の前に、ある日突然太陽光パネルが出現なんてことは避けたい!

もちろん、これについても考えられる限りの対策が書かれています。また、最近は太陽光パネルがもたらすさまざまな影響が注目されるようになり、地域によっては規制に向けて動くところも出てきました。政府は2027年度から新規メガソーラー導入への支援を廃止する方針を固めましたね。

 

巻末では、田舎暮らしの終わらせ方まで紹介されています。終わり方にまで言及したものはあまり見たことがありません。何ごとも終わりが訪れる。終わりの地点からものごとを考えるのはとても重要だと認識させられました。