澤田晃宏著『東京を捨てる』

『東京を捨てる コロナ移住のリアル』(中公新書ラクレ、2021年)

コロナ以後、リモートワークが普及したことが主なきっかけとなり、地方に住まいを移す人が出てきました。リモートワークだとそもそも出社の必要がなく(現在では出社が増えているようですが)、出社するときも東京の近郊県であれば新幹線を使えば可能ということで、仕事に対応できたのが大きな要因です。家の広さが東京とは格段に違うというのが皆さん共通しています。東京以外の不動産屋さんでは「こんなに広くてこの値段でいいの!?」という物件をよく目にします。

ただ、この動きが全国的に進んだかというとそうでもなく、多くは東京圏が中心です。そして、今はコロナ自体が落ち着いたため「コロナ移住」はもうないと思われますが、本書で紹介されている実例は、移住情報として十分参考にできます。

このほか、地域おこし協力隊、半農半エックス、田舎暮らしのトリセツも紹介されています。特に田舎暮らしのトリセツはとてもありがたいです。もろもろの住居事情をはじめ、水道代や国保料は地域差が大きいなど、ともすればスルーしがちな情報を詳しく解説してくれています。あと、これは指摘する人が多いですが、都会と地方で生活費にそれほど大きな差はないということ。私も会津若松市のスーパーで「あれ、東京と大差ないな」と感じたことを思い出しました。

ちなみに、著者の澤田さんは淡路島に移住されています。淡路島は豊かな自然に恵まれ、農作物や海産物も豊富。ハローキティスマイルができたり、新たに開業するカフェやレストラン情報もいろいろ聞きます。また、神戸&大阪にアクセスしやすいのもメリットで、車で神戸三宮まで約1時間ほど、大阪にも約1時間半ほどで着きます。高速バスも充実しています。

確かに都会に比べて田舎の給与水準は低めだし、娯楽施設も多くはない。それでも、田舎には「創り出す喜び」があると語る澤田さん。自然の恵みはもちろんのこと、空き家や商店街も材料として、新たなものを創り出す活動が全国各地で行われています。